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LOVE ME DO 63年以降の“LOVE ME DO”の使用に関して、版権取り決めの際、全ての“LOVE ME DO”は、LPヴァージョンを使用する事が決められた為、この曲のリミックス済みテープ、及び、2トラック・マスターテープは、シングルリリース後、63年頃に破棄された。混乱を防ぐ為の処置だという。 63年以降の“LOVE ME DO”に関して全てのレコードで、シングル、編集盤に関わらず、LP“PLEASE PLEASE ME”ヴァージョンが使用されている。88年に発売されたシングルCDに関しても、2000年に発売された“THE BEATLES 1”に関しても、LPヴァージョンが使用された。 唯一の例外は、USアナログ盤“RARITIES”と、CD“Past Masters Vol 1”。これらに収録されているこの曲は、当時のアナログシングル盤からの針起こしが元になっている。 このヴァージョンでは、リンゴがドラムを担当。 P.S. I LOVE YOU 同名のタイトル曲が他のアーティストのA面シングルとして存在した為、この曲のA面シングルが発売された事はこれまでに一度も無い。 オーバーダビング無しのランスルーミックス。2トラックテープで録音されたが、ステレオヴァージョンは存在しない。この曲のオリジナル2トラックテープは、現在でも“EMIスタジオ(アビーロード・スタジオ)”に保管されている。 ベースのチューニングがズレている(D弦がシャープ気味、E弦がフラット気味。かと言ってA弦がギターと合っているかというと、これも合っていない)。 アンディ・ホワイトがドラム、リンゴがマラカスを担当。10テイク録音し、テイク10がミックスされ、レコード化された。 |
PLEASE PLEASE ME 定説によれば、セカンドシングルには当初、“HOW DO YOU DO IT”が用意されており、候補曲だったという事になっているが、“HOW DO YOU DO IT”は、“LOVE ME DO”のセッションで録音されており、しかも“LOVE ME DO”リリース前に録音されていた。“PLEASE PLEASE ME”のセッション中では無い。従って“HOW DO YOU DO IT”がデビューシングルになっていた可能性も有ったのかも知れない(まぁ普通に考えれば、そんな事は考えられないが・・・)。“HOW DO YOU DO IT”がボツになった為、ビートルズのシングルは全てオリジナル・ナンバーのみのリリースとなった(UK盤のみ)。 こちらもLPヴァージョンとは異なる。18テイク録音されたが、恐らくテイク17にハーモニカを重ねたものがテイク18だろう。その後切り貼り編集し、マスタリングしてある。という事は、切り張り編集のうち、ハーモニカが含まれている部分は、テイク18を使用した、という事になる。ポールとジョンの歌詞の間違いや、ジョージのギターの違い(1:17付近)などは恐らく、初期の複数テイクを使用したという事が考えられる。、ステレオLPヴァージョンでは聴かれない、完璧な演奏として繋げられたミックスである。 CD“PLEASE PLEASE ME”収録ヴァージョンと同じ。 主な編集箇所:複数テイクから(0:23)(0:35)(0:49)(1:20)(1:36)(1:44)(1:51)の部分(いずれもCDシングルのタイムより) 何故かは不明だが、“CD赤盤”及び“CD EP Collection”のこの曲は、(1:44)の部分を(1:47)の箇所を使い、テープの切れ目が分からない様に編集してある。恐らく(1:44)の部分の音の減衰の著しい部分を隠す(または綺麗に仕上げる)為と思われる。今後はこのヴァージョンに統一する方針を取ると思われる。2009年にCD"BEATLES IN MONO"が発売されたが、こちらもこの最新ヴァージョンが使用された。 ASK ME WHY ステレオ盤LP“PLEASE PLEASE ME”ヴァージョンよりもエコーが少なめ。ドラム、ベース、ギター2本とジョンのヴォーカル、ポールとジョージのコーラスのライヴ録り。 ある書籍には、「ジョンはJ-160Eを弾いている」と書かれてあるものがあるが、実際は325。ヴォーカル用マイクがジョンの325の音を拾ってしまった為(ジョンの325はホロウ・ボディの為、アコギの様に生音量が大きい)(初期のライヴ録りでは、この様なケースが幾つも有る)。 ランスルーでノーマルミックス。編集は無し。CD“PLEASE PLEASE ME”収録ヴァージョンと同じ。 |
FROM ME TO YOU 中間部分のハーモニカソロにはベースが重ねられている。ギターの可能性も有るが(テープの速度を速めて録音)、この時期にテープの速度を変えて録る事は考えにくい・・・。 この曲のモノ版では、イントロにハーモニカが挿入されているが、ステレオ版では、ハーモニカは聞かれない。 ポールのベースは、ピック弾きではなく、親指で弾いている。 THANK YOU GIRL この曲もモノ版とステレオ版ではミックスが異なる。 ステレオ版では(0:54)と(1:00)の部分で、ハーモニカが挿入されているが、モノ版には入っていない。 また、ステレオ版では(1:38)の部分でポールがベースをミスるが、モノ版ではそのミスが無い。これはテープ編集の違いの為。 モノ版の主な編集箇所;(0:04)(0:52)(1:02)(1:37)(1:41)の部分(いずれもCDシングルのタイムより) ステレオ版はCD化されていない為、詳しいポジションのタイムは不明だが、数カ所でテープの繋ぎ貼り編集がなされている。 なお、この曲でもポールは、ピックではなく、親指で弾いている。 |
SHE LOVES YOU この曲には1つのヴァージョンしか存在しない。不思議な事に、オリジナル2トラックテープは処分された。よく知られている事だが、この曲のステレオ版と名乗ってある物は全て、ただ唯一のモノリミックスが元になっており、左右の位相を逆にしただけの疑似ステレオに過ぎない。 この曲の編集も、他と同様、テープの切り貼り作業でマスターを作成した。モノミックスと同時にステレオミックスが作られなかったのは、アルバムに収録の予定が無かった為と、編集に時間が掛かり過ぎる事であろう。 主な編集箇所;(0:12)(0:38)(1:03)(1:16)(1:23)(1:29)(1:31)(1:50)(1:57)(2:06)の部分(いずれもCDシングルのタイムより) “CD赤盤”及び“BEATLES 1”では、極力テープの繋ぎ目が判らない様にイコライジング処理されている様だ。 I'LL GET YOU “SHE LOVES YOU”と“I'LL GET YOU”を録音したオリジナル2トラックテープは、どういう訳か処分されてしまっている。 従って、こちらのヴァージョンも1つしかない事になる。ステレオ版は疑似ステレオ。 |
I WANT TO HOLD YOUR HAND このシングルのレコーディングから、EMIスタジオでは、4トラックレコーダーが導入されており、よりオーバーダブが簡単に行える様になった。この曲のステレオ版を聴くと、ヴォーカル歌い出しの直前にセンターのフェーダーが上がってくるのが判る。当時のオーバーダブの際のモニタリングはヘッドフォンではなく、スタジオのスピーカーから流していたので、ヴォーカル用マイクがその音までもを拾っているのだ。しかも時折右側から、仮ヴォーカルと思われる声が聴こえてくる。 基本的に、この曲のステレオ版とモノ版では、差程違いは無いが、ステレオ版には少なくとも2種類のミックスが存在する。 通常出回っているこの曲のステレオ版は、センターに配置されたジョージのギターの音量が、モノ版と比べてかなり小さめだが、オランダ企画の“GREATEST HITS-各国盤”では、モノ版並みに大きめにミックスされている。 また、オーストラリアでは、ヴォーカルが右側にパンニングされているヴァージョンが存在する。 THIS BOY 4トラック導入により、ヴォーカルのダブルトラッキングが容易くなった。サビの部分のジョンのダブルトラックは涙ものだ・・・。ポールのベースは親指弾きで弾いている。 この曲のステレオ版は81年発売の“EP COLLECTION”で初めて発表された(それまでは全て疑似ステレオ)。 この曲のミックスに関しては、モノ版、ステレオ版、共に1種類ずつである。 |
CAN'T BUY ME LOVE この曲のモノ版とステレオ版ではミックスが異なる。ステレオ版では“RECORDING”の項でも述べたが、(1:09)の部分と(1:29)の部分で編集作業が行われている筈だ。CDシングル等のモノラル版では、編集した痕跡が無い。 CD“A HAED DAY'S NIGHT”とシングルCDは全く同一の音源である。いわゆるモノラル版だ(当時のモノ・シングル、モノLPを含む)。 “CD「赤盤」”“THE BEATLES 1”(当時のステレオLPを含む)等に収録されているのはステレオ版だが、先程述べたポイントで編集されている為、両者は若干のミックス違いを起こしている。 ギターソロのダブルトラックで、(1:22)の部分、モノラル版では片方のギターの音量が明らかに小さめであるのに対して、ステレオ版では両者が同じ音量でミックスされている。 色んな本で目にする事だが、「エコーの様に聴こえる片方のギターが、一音足りない」、という事は有り得ない。決して、「聴こえない」わけでは無く「音量が小さめ」なのである。 フランスツアー中、パリのEMI系スタジオでレコーディングされ、ロンドンでオーヴァーダブとミキシングが行われたが、パリEMIのマルチトラックテープの質が悪かった為、ミキシング最中にノーマン・スミスによってドラムス(ハイハット)のオーヴァーダブ作業が行われた(ビートルズはツアー中の為、リンゴ不在)。ステレオミックスとモノミックスでこの違いを確認する事が出来る。 YOU CAN'T DO THAT このモノ版とステレオ版とでは、全く同様のミックスがなされている。が、ステレオ版のリミックスが作成されたのは、モノ版の3ヶ月後だ。したがって、イコライジングやエコーの掛かり具合等に関しては、やはり若干の違いが有る。 コーラス及びジョンのダブルトラック用ヴォーカルは、カウベル(ポール)、ボンゴ(リンゴ他二人)と共に同一のトラックに収められているが、カウベルの音質が変わる(0:37)の部分でパンチ・イン、(0:47)の部分でパンチ・アウトしてある可能性がある。同様に(1:27)(1:52)でパンチ・イン、アウトを行っている可能性がある。 (余談になるが・・・)この曲のハイライトはやはりジョンのギターソロだろう。ただ残念なのは、ライヴ時の映像として、ギターソロを弾くジョンの姿を観る事が出来ない事(同様に、初期の“Long Tall Sally”のライヴでのジョンのギターソロを弾く姿も見る事が出来ない)。 |
A HARD DAY'S NIGHT イントロのギター2本+ピアノには、大量のコンプレッサーが掛けられており、より一層の緊張感、衝撃感を持たせる事に成功している。現代のデジタルのコンプレッサーでは得にくい雰囲気だろう。当時も今も真空管式のコンプレッサーが愛用されるのは、掛かり具合がストレートで癖が無いからだ。デジタルのコンプでは音が潰れてしまう。 米“United Artists”盤のこの曲は若干エコーが多め、英盤シングルはストレートなミックスになっている。ステレオ版、モノラル版、共にヴォーカルはダブルトラック。細かい違いは無い。フェイド・アウトに多少の違いが有る程度。U/A盤LP“A HARD DAY'S NIGHT”の音源は、映画のサントラとしても使われている。 THINGS WE SAID TODAY モノ版とステレオ版との違いは差ほど無い。但し米キャピトル盤のステレオ版では、ポールのセカンドヴォーカルがやや大きめにミックスされている。 (この時期以降、英EMIから各国へテープを送る際、ミックスをわざと変える傾向が目立ち始める) |
I FEEL FINE イントロのギターのフィードバックは、ポールが弾くベースの“A”の音に、ジョンのアコギが反応し、アンプとギターでフィードバックする、というやり方だ。(ステレオ版で、音が左から右へ移動していく様に聴こえるのはその為だ。ジョンのギターをパンニングした訳では無い) (フィードバックとは、2つのトランスデューサー(この場合、ギターのピックアップと、アンプのスピーカー)同士が、電気回路の中で回る現象の事を言う。ハウリングと似ているが全く同じではない。ポールのベースアンプから出た音が、ジョンのギターの弦を振動させ、その弦の振動をギターのピックアップが拾い、ギターアンプのスピーカーから出力された音が、またギターの弦を振動させ、ピックアップがその振動を拾い、アンプのスピーカーから出力され・・・の繰り返し、という事なのである) このポールのベースの音の前に、約1秒半程の沈黙(喋り声等の雑音)が入るヴァージョンが存在する。イタリアのみで発売されたアナログ盤“BEATLES IN ITALY”等で聴く事が出来る。このヴァージョンはCD化されていない。 SHE'S A WOMAN この曲のステレオ版は、81年発売の“EP COLLECTION”で初めて発売されたが、その際にはポールの「1.2.3.4」というカウントが入っていた。現在のCD“PAST MASTERS Vol.1”には入っていない。 |
TICKET TO RIDE この頃からビートルズのレコーディングでは、ベーシックトラック録りを重点的に行い、仮ヴォーカルを入れる事はあっても、リリース版で聴かれるヴォーカルは必ずオーバーダブで入れる事になる。言い換えれば、ベーシックトラックを録り終えれば、後は誰が何を演奏し録音しても何ら不思議は無い、という事になる。案の定、この曲のギターのオブリガードは、ポールによるものだ。4トラックテープを別の2トラックテープにまとめてオーバーダビングを行う(いわゆるピンポン録音)。 4トラックをそのままリミックスしたこの曲では、モノ版ステレオ版では、相違は無い。フェイドアウトが多少異なる程度。 YES IT IS ある本には、「トーンペダル(ワウワウ・ベダル)を使用」などと書いてあるが・・・(ヴォリュームペダルの事)。 モノ版とステレオ版との相違は差ほど無い。ステレオ版は“SHE'S A WOMAN”同様、81年発売の“EP COLLECTION”が初めてだが、現在ではこちらが主流。 |
HELP ! この曲に関しては、以前から、“モノ版とステレオ版は別テイク”という説が有力だったが、厳密に言えば実はそうでは無い。 まず、モノ版ステレオ版共に、ドラム、ベース、アコースティックギター(ジョン)、エレキギター(ジョージ)に関しては、同一のテイクである。 だが、モノラル版でのこれらの楽器は、不可解な事に、(0:08)(0:46)(1:27)(2:07)でミュートされる(厳密には0:08はフェイドアウト)。 最も混乱を招いてるヴォーカルに関しては、オープニングのみ、モノ版ステレオ版どちらも同一も物だが、その後のヴォーカルは全く異なっている。公式の記録によると、どちらも同じテイクからリミックスが作成されていたとの記述が有るが、モノ版とステレオ版のリミックスの日にちが開いている事から、モノ版リミックス後にヴォーカルのみ録り直され、新たにステレオリミックス作業が行われた可能性もある。 なお、モノ版で、最初のヴァースに入る前に編集された様な音の変化が聞き取れる。が、ベーシックトラックは同じである。 ステレオ版にはタンバリンが入っているが、モノ版にはタンバリンは無い。 この曲でリンゴは、チャイナシンバルを使用している可能性がある。 I'M DOWN |
WE CAN WORK IT OUT 4トラックで録音、オルガンの音量がモノ版ステレオ版で異なる為、オルガンは1トラックに収められていると考えられる。ダブルトラック・ヴォーカルの内の、1stヴォーカルはハーモニウムと共に1トラックに収められたが、2ndヴォーカルは1トラック独立している。その為、英盤ステレオ版ではオルガンとハーモニウムが右側に定位されているのに対して、米盤ステレオ版では、オルガンがセンター、ハーモニウムが右側に定位されている。 モノ版では、かなり強めにコンプレッサーが掛けられている。 DAY TRIPPER まず、ギターソロが終わった後の“Tired to please her”の直後(1:50)(CDシングルタイム)で、タンバリンの音が一瞬消えるという点だが、モノ版とステレオ版では長さが異なる。モノ版は2拍、ステレオ版では1拍消える。この箇所のノーカット版はブートCD等で確認する事が出来るが、(1:50)の部分でパンチ・イン、アウトを行った跡が有り、その際に入ってしまったノイズがテープに残されていた。恐らくジョージ・マーティンは、このノイズを消すために“タンバリンを犠牲に”して、1トラックをミュートしたと思われる。 これはCD「赤盤」でも同様であったが、“THE BEATLES 1”に収録のこの曲では、コンピューターを使用し、曲の別の部分(0:20)か(0:55)の部分から右チャンネルのみを、引き出し、(1:50)の部分に移植した様だ。と同時にエンディングの“Day tripper,Day tripper yeh”の部分、いきなり“Day tripper yeh(2:32)”と歌い出したため、(2:38)から右チャンネルのみを取り出し、同様に移植している。 またこの曲のUSキャピトル“YESTERDAY AND TODAY”のステレオ盤でのイントロは、まず左チャンネルのギターから始まり、右チャンネルのギターは、ベースと同時にフェイドインする。 ちなみに“THE BEATLES 1”の各曲のリマスターを強く要望したのは、日本の東芝EMIでビートルズとクイーンを担当している女性の方だ。この方のお陰で、世界中で発売された“THE BEATLES 1”では、最新の技術を使ったこの新しいミックスを聴く事が出来る様になった。 2009年発売の"PAST MASTERS"収録の同曲ステレオ版は、今までに無い新たな処理を施したニューヴァージョンが収録されている(“Tired to please her”の直後のトラック処理のみ)。 |
PAPERBACK WRITER 4トラックテープを上手く使い、効率良く作業出来た典型的な例だろう。4トラックのうち、ベーシックトラック(ドラム、ギターX2、タンバリン)は動かさず、残りの3トラックをパズルの様に埋めていった感じだ。 リミックスの際、ヴォーカルにテープエコーが掛けられている。“A HARD DAY'S NIGHT”のオープニングも当初は同様のテープエコーを使用したテイクを数回録っている。 モノ版では、オープニングのコーラスは若干エコーが掛かっている。(0:48)(1:37)の部分でハイハットのリズムを刻む音が聴こえる。1:37付近のテープエコーが若干ズレる。ステレオ版ではこれらの点は確認出来ない。 ポールはこの曲で、リッケンバッカーのベースを使用している。録音はDIを使用している様に思われがちだが、実際は大きなスピーカーをマイクロフォン代わりにし、ベースアンプのキャビ前に置いて録音したらしい。DIに思われるのは、ベースのみが後からのオーバーダブにより、他楽器の被り等が全く無いからであろう・・・。 RAIN |
YELLOW SUBMARINE モノ版では、ヴォーカルと同時に演奏が始まるが、ステレオ版では“town”から入る。その他、“蒸気機関”の様なエフェクトのフェードアウトもステレオ版は長め、モノ版は短め。その為モノ版ではジョンの“a life of ease”を聴く事が出来るが、ステレオ版では“every one of us”から入る。その他の全体的なミックスは変わっていない。 ELEANOR RIGBY オープニングのコーラスの後、最初のヴァースで、ステレオ版では“Elea〜”というヴォーカルが一瞬左チャンネルに残るが、モノラル版はそういったミスは無い。これは左右に分けられたポールのヴォーカルだが、いわゆるオーバーダブしたヴォーカルではなく、ディレイに似たテープエコーの類のものだ。ADTと呼ばれるEMI独自の装置だ。ステレオ版では、この方チャンネルのフェーダーの落としが遅かった為、“Elea〜”という部分が一瞬左チャンネルに残ってしまっている。 ADTと呼ばれる装置等については、同様のシステムをレス・ポール氏が50年代に既に考案し使用していた。フェイジングもレス・ポール氏の考案のもの。8トラックマルチレコーダーに関しても56年頃“AMPEX”社に発注し完成させている。この8トラックマシンはセル・シンクが可能であり、現在のシステムと殆ど変わらない。 (セル・シンク:1つのヘッドで任意のトラックの録音・再生を同時に行える機能の事) |
STRAWBERRY FIELDS FOREVER PENNY LANE |
ALL YOU NEED IS LOVE “RECORDING”の項でも書いたが、この曲は、4トラックマシン2台をシンクロさせてレコーディングしたと思われる。 以下、モノ版とステレオ版との違いについて ・ステレオ版では、イントロのピアノが若干早めにスタートしているが、モノ版では同時にスタートする(TV版も同様)。 ・モノ版ではよく聴こえるドラムの音が、ステレオ版では全体的に小さい。 ・モノ版では、ギターソロにフランジャーが掛けられているが、ステレオ版には掛けられていない。 ・モノ版のギターソロは早めにフェイドアウトするが、ステレオ版では長めに入っている。 ・コーダ部分のジョンのヴォーカルが、モノ版ではやや小さめ。 ジョンのリードヴォーカルは一部を除き、シングルトラックに収められている。決してダブルトラックではない。例外はサビの部分だが、これはダブルトラックと言うよりトリプルトラックと呼んだ方が良いだろう。ライヴの際に録ったトラックも、サビの部分だけは録り直された可能性が高い。 エディ・クレイマーがエンジニアとして、この曲を担当した際、ジョージ・マーティンに「フランジャー」の事について色々質問したそうだ。そのからくりを知ったクレイマーは暫くの間興奮が止まらず、「ジミ!俺達もやろうぜ!」と言ったそうだ。 BABY, YOU'RE A RICH MAN |
HELLO GOODBYE I AM THE WALRUS |
LADY MADONNA THE INNER LIGHT |
HEY JUDE ビートルズの代表作で世界中で大ヒットした曲。20世紀を代表する名曲だと言っても決して過言では無い。 この手の、ヴォーカルから入る曲に関しては、ピアノを弾きながら同時にヴォーカルも録るケースが多い(カウントが有ろうが無かろうが・・・)。が、一部分のヴォーカルだけ(2:15〜)の“And don't you know that it's just you”から(2:37)の“na na na yeh”までは録り直された可能性がある。。かすかに右側チャンネルから、ピアノ用マイクが拾ったポールのヴォーカルを確認する事が出来る。また、“na na na na, Hey Jude”の部分(3:14)から(3:58)付近のアドリブのヴォーカルはカットされている。曲を盛り上げる上手いミックスだ! ベースを弾いているのはジョージと言われているが、ポールが後からオーバーダブしたと思われる。 モノ版とステレオ版では、ミックスの違いは殆ど無い。 REVOLUTION この曲に関してもモノ版、ステレオ版ではミックスの違いは無い。まるでステレオ版からモノ版を作成した様に聞こえるが、実際は“HEY JUDE”も、この曲も、ステレオ版が作られたのは、モノ版作成の2年後だ。 |
GET BACK (ここでは“フィル・スペクター・ヴァージョン”は抜きとして考える) ビートルズのシングルでは最後のモノラルシングルレコードとなった“GET BACK”。モノ版とステレオ版は同日にリミックスされたらしい。 ドラムを初めてマルチトラックで収録したレコーディングである。右側にスネア、ハイ・ハット。左側にキック、フロア・タム、ライド及びクラッシュシンバル。ほぼ中央にタム・タムが配置された。これらは8トラックテープの2トラックに収録された。 (ちなみにドラムに使用されたマイクは計4本。スネア録り1本。バスドラ録り1本。フロアタム側1本。OH1本) このテイクでは、キーボードソロの前の部分の歌詞、“Get back get back, Back to where you once belonged”と歌っている。 DON'T LET ME DOWN こちらも“GET BACK”と同日に同様のミキシングでモノ版、ステレオ版が作成された。 モノ版とステレオ版では、殆ど同じミキシングを行っている。“GET BACK”同様、こちらもドラムは左右に配置された。 なお、これら2曲のステレオ版が発表されたのは、70年発売のUS盤“BEATLES AGAIN (HEY JUDE)”が初めて。 |
THE BALLAD OF JOHN AND YOKO OLD BROWN SHOE |
SOMETHING COME TOGETHER |
LET IT BE ジョージ・マーティンがプロデュースしたこのヴァージョンは、ベースの音量が極端に小さい。これは推測だが、70年にベース・トラックを差し替えた事により、映画“LET IT BE”と異なる印象を聴き手に与える危険性を避ける為だったのでは、という考え方も出来る(「RECORDING」の項参照)。とてもじゃないが、小さいラジカセではベースの音は聴き取れないだろう・・・。 YOU KNOW MY NAME (LOOK UP THE NUMBER) |