第1巻

「『キングコング対ゴジラ』のフィルムに関して」
(危機に瀕している映画作品たち)



:「今回の4Kプロジェクトに於いての『10巻のフィルム』の内訳は...どういう物だったのでしょう...。」

清水さん:「この“キングコング対ゴジラ”は、『短縮版のオリジナルネガが6巻』で、『カットされていた部分が4巻』ですね...。」

:「それが(ロール1のカットネガを含む)24分有った、という事なんですね...」

清水さん:「そうですね。それが24分ですね...。で、(2014年に)ブルーレイを出す事になって...まず、カットされていたネガが無くなっていたんですね...(1991年の)LDを出す時に一回発見されてLDを出したんですけど、再び行方が分からなくなっていたんです」



:「なるほど...。。えと、今回見つかった際に『カットネガ』が全て繋げられていたというお話があって...、1991年のLD化の際に『カットネガ』が見つかった時は...」

TORIさん:「あ〜この時(1991年時)も繋がっていました。」

:「え!、この時も繋がってたんですか!」

TORIさん:「はい、もう、発見した時には繋がっていました。」

:「すると、繋がっていたものをテレシネして編集したという事ですね...。」

清水さん:「そうですね。」

:「で、今回は繋げたものをテレシネして...」

清水さん:「スキャニングして。4Kスキャニングをして、それを元にもう一回並べ直したという事ですね。」

TORIさん:「だから作業としては同じです。」

清水さん:「このレーザーディスクからブルーレイに至るまでと、今回のと違うのは、今までのソフトは映像優先なんですよ。映像優先で、それに合わせて音を編集しているんです。
で、今回のは逆のアプローチで、音は完全版の長さの物が残っていたので、それを敷いて絵を填めこんで...。そうすると足りなくなってくる所が出てくるので...じゃあそれをデジタル処理で埋めようというのが今回のパターンなんで...。それをやると15秒長くなる、というのがそれなので。」

TORIさん:「今回4チャンネル(音声)で放送しているから...、未だにこのノーカットの音声のモノラルっていうのは、昔出た「完全版ドラマ編」のLPでしか聴けない...。あれが全く切っていないやつだから。あれはもう30年前の商品だけど、「キングコング対ゴジラ」の、1秒も欠けていないモノラル音声っていうのは、あれでしか聴けない。これ(Blu-ray盤)ではまだ欠けてるからね。」

清水さん:「(笑)...絵に合わせて編集しちゃってるんで...。」

TORIさん:「そう、15秒足りてない...ところがあのLPだけは、完全ノーカットそのままなので...あれを一応正確な回転数で「4K」に当てると、一応、ぴたりと尺が合うはず。あれ(LP)だけ、まだ商品化(CD化)されていないので。あれだけなんですよ、モノラルは。
(4Kデジタルリマスター版が)Ultra Blu-rayになったら入れるんでしょうけど。」

清水さん:「モノも入れたいですよね。モノもデジタル化してあるんで...。」

TORIさん:「モノも入っててくれないと。ステレオとモノラルは作業工程が別ですものね。」

清水さん:「絵のネガは切り刻まれて24分カットされてたんですけど、音ネガは新しく作ってるんですよ、短縮版(公開時)用に...。
なので...昔のネガがそのまま残ってたんですね。だから今回はそれを『音スキャン』してデータ化して、それをまずベースに敷いて、絵を填めこんでいった、という感じなんですね。」

TORIさん:「で、そこに更に整音した4チャンネルを填め込むわけですね。」

清水さん:「そういう事ですね。で、このモノラル版をまず敷いて編集した上に更に、音は4チャンネル版が残っていたので、それをもう一回填めて、作っていくという...」

TORIさん:「非常に複雑で。」

清水さん:「で、絵を敷いていっても足りないコマが有るじゃないですか。そこが何コマかを調べる為に、ブルーレイの時の海外版用の映像が有ったので、それもデジタル化して填めて...、そうすると海外版には残っているカットも結構有るんで、それを敷くと『その間が何コマ足りない』とか分かる訳なんですよ。それを敷いて検証していったみたいな感じで。」

:「なるほど〜...。。それは本当に複雑ですね...。。」



:「えと...、オープニングの『創立30周年記念映画』の部分、「DVD」は静止画で「ブルーレイ」は動画になっているんですけど...。という事は1991年のレーザーディスクに使用されたマスター映像をブルーレイでは使ったのかな、って...。」

清水さん:「ブルーレイは“別素材”から持ってきたのかも知れません...」

:「え〜!そうなんですか〜!!」

清水さん:「で、こっち(DVD)の方は、デジタル処理を施している時に、静止画にしちゃってるのかも知れないですね...。で、この(ブルーレイの)時は...。結局これ(LD)ってSD画質じゃないですか。こっち(ブルーレイ)はHDじゃないですか。で、(ブルーレイ化の際)こっち(LD)のマスターは使えないんで、新しく『30周年記念タイトル』を探す必要があったと。で、今回のデジタルリマスターの時は『30周年記念(のネガ)』も見つかったので、それも含めてもう一回復元しなくちゃいけないんですよね...。」

:「そうだったんですね...。。で、それが見事に復活したという事だったんですね...。。」



:「あと...、この頃(1960年代当時)のフィルムの原材料、と言いますか、素材は何だったのでしょう...」

清水さん:「素材はアセテートですね。基本セーフティーです(筆者注:映画創世記〜1900年代中期頃までは『ニトロセルロース』など燃えやすい素材のフィルムが使われていたが、映画館が火災になったり、ライブラリ倉庫が火災になって失われたフィルムも多数存在した為、その後は『セーフティーフィルム』が導入される様になった)。ナイトレートとアセテートと。最近のポリエステルはごく最近なんで...。
この頃(1962年当時)は全部アセテートですね。ただ、問題は...、アセテートって中にお酢の成分を含んでいるんで、時間が経つとお酢がジュワーと滲み出てきてフィルムを溶かすんですよ。」

TORIさん:「それが例の『ビネガーシンドローム』...」

清水さん:「ビネガーシンドロームっていうもので、日本中のフィルムが、もう世界中のフィルムが溶け始めて危機に瀕しているという。」

:「えーー!」

清水さん:「それも有ったんで、今回“キンゴジ”をデジタルに置き換えられて良かったと思ってます。」