キングコング対ゴジラ 完全復刻版 |
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以下に"完全復刻版"の詳細を記す。 1."オリジナル復元版"とは全く異なる高画質である。 初めてこのLDを観た時の驚きと言ったら、もう何も言えない程の感動だった・・・。「創立30周年記念映画」の部分で、「雷に打たれた様な衝撃」をいまだに忘れられないのである・・・。 (DVDの項目で後述するが)東宝はこのヴァージョンを完全なるマスターと位置付けしたい意向があったものと思われる。 2.冒頭、"世界驚異シリーズ"のシーンで、別の映像が挟まれている。 決して「サブリミナル効果」を狙ったものでは無いと思われるが、編集ミスからか"世界驚異シリーズ"のアニメーション部分に"海外取材班出発"のパーティのシーンが混入している。このディスクは「A03-P」だが、3回目のマスタリングでもこのミスは発見出来なかったのかも知れない。 (マニア向けのサービスだった、という考え方も出来る)
3.ビデオ編集で“完全版”を復元されていた事がよく分かる映像がある。 上の項と重なるが、下記の画像を観ると、この「完全復刻版」が、「短縮版」「カットフィルム」、両フィルムを別々にテレシネした後に、ビデオ編集されていた事がよく分かる。
4.潜水艦シーホーク号シーンの日本語字幕の字体が多少異なる。 「オリジナル復元版」と「完全復刻版」と異なる部分がある。潜水艦シーホーク号内での日本語字幕の字体が変わっている事である。 個人的に以前から不思議に思っていた点だった。2種類の日本語字幕フィルムが存在したのかな?、とか...。 そこで、85年初ソフト化から2014年Blu-ray版まで修復に携われておられた"TORI様"に質問してみました。以下、お答えを記します。 「完全復刻版」作成の際、「日本語字幕の無いオリジナルネガ」が新たに発見されたが、「字ネガ(文字のみのネガ)」は見つからなかった。 (「字幕無しの映像のネガ」と「字ネガ」は別々に存在する。それらを別のフィルムに重ねて焼く事により、「字幕付きポジ(上映用フィルム)」が完成するという事) この"完全復刻版"の為に、新たに字幕を付ける際に、「字体と改行を、オリジナル版と同じ様にして欲しい」、という依頼を行い、実現したシークエンスだった。 という、本当に素晴らしい仕事だったのでした。 (出典:TORI様)(ご協力、本当に有り難う御座います!) 「完全復刻版」を元に製作された「DVD」にもこの字体が使用された。
5.音楽の「フェイドアウト・フェイドイン」が無い。 高島忠夫さん扮する"桜井"のセリフ「俺達はこれから巨大なる魔神にインタビューじゃねぇか。ひっつくなよ!」の後、音楽が一度フェイドアウトした後、フェイドインするのだが、この"完全復刻版"のみ、音楽は消えずにそのまま流れている(DVD版オーディオコメンタリーも同様:詳細はDVD版にて)。 先に述べた通り、素材別それぞれのステレオシネテープ(セリフ・効果音・音楽)は発見されたものの、1962年当時の4chパーフェクトステレオ音源は発見出来なかった。したがって、素材別ステレオシネテープを新たにリミックスした音源が使用された為、この様なヴァージョンが存在する。 「音楽が消えずに」そのまま入っている点などは、今では実に貴重なヴァージョンである。 6.音楽音声に一部モノラル音声が含まれている。 このLDには、これらの新たな発見となったシネテープを存分に使用し、デジタル音声に"音楽のみ"、アナログ音声に"本編音声"という仕様で発売された。どちらも全てステレオ音声で、臨場感に満ちた音質になった事は実に素晴らしい事だった。 不思議な事に、A面40分23秒辺りから始まる「眠れる魔神」のシーンでの「アナログ音声の本編部」の音楽のみ、モノラルで収録されている。ちなみにデジタル音声の「音楽のみ」のトラックはステレオで収録されている。高音質で空気感まで感じる"2ch音楽トラック"と比べて"モノラル音楽トラック"は低域が少なく、高音域もこもった音声になっていた。その違和感を減らす為か、「眠れる魔神」のモノラル音楽トラックにイコライジング処理を施し、低音域と高音域を上げて臨場感を出している。 このシネテープステレオ音源は経年変化の影響か、ワウフラッターが酷くなっているが、実に貴重なヴァージョンだと言える。 <2019年7月追記> 7.映像が切り替わる様に見えるカットがある。 この「完全復刻版」のLDのB面32:39の部分で、下記の画像の様に、不自然にフィルムが切り替わる様に見える箇所がある。微妙に色彩が変わる...。 これは1970年に「短縮版」が製作された際に切り取られた「ロール7のカットネガ」に起因するものである事が分かった。
が、これは「短縮版」の製作時に「ロール7のオリジナルネガ」から切り取られた際にこの状態で繋げられて保存されていた為であり、決して「完全復刻版」製作時の「ビデオ編集」の際に起きたミスでは無い。 先日(2019年6月末)購入したばかりの「映像編集ソフト」は、複数の動画を同時に廻して観る事が出来た為、今回、入手し直したばかりの「キンゴジ紙箱VHS」と、この「完全復刻版」と映像を並べて見比べてみた事で判明したのだった。
@→A→B→C→D→E となっていたが、本来は↓ 「オリジナル復元版」(海外版・2019年4Kデジタルリマスター版も同様) @→A→C→A→B→D→E となり、「オリジナル復元版」が本来の正しい順番であった事が判明したのである。 ちなみに、「短縮版」では、 @→D→E となっており、AB及びCは、ロール7のカットネガにしか存在しない。 つまり、この項の冒頭で紹介した「コングが手を見つめているシーン」でフィルムが切り替わった様に見える部分には「咆哮するゴジラ」のカットが挟まれていたのだ。「短縮版」製作時のネガが起こしてしまった混乱が、後に大きな混乱を招く事になっていたのである。一方残された「カットネガ」がこの様に繋げられていた事は、実は必然的な事であったのだ。 この「完全復刻版」のマスターを元に製作された「2001年DVD版」でも同様に受け継がれ、2014年発売の「Blu-ray版」「2016年4Kデジタルリマスター版」でもこの編集になっていた。 ちなみに「海外版」は、この「オリジナル復元版」と同様のカットの繋がりになっている。海外版を全面的に信用するのは個人的には危険だと思っている筆者であるが、恐らくこの順番が最も正しく、一方「完全復刻版」のカットは長らく、「2019年4Kデジタルリマスター版」が公開されるまで、このカットの順番で私達の脳に刷り込まれ続けたのだった。 この"完全復刻版"では、フィルム切り貼りの際のスプライス跡が画面下部に映っている。次の画面の下部分が映っているわけだが、これを観察すると、"ニュープリント版"のフィルムが元になっている事がよく分かる。 |