キングコング対ゴジラ
2008年版 日本映画専門チャンネル
2014年版 日本映画専門チャンネル
2008年10月27日、「日本映画専門チャンネル開局10周年特別企画 史上最強ハイビジョン ゴジラ完全放送」内に於いて、
2014年3月15日、「総力特集・ゴジラ 30作品ハイビジョン・リマスター完全放送」内に於いて、
「キングコング対ゴジラ」のハイヴィジョン版が「日本映画専門チャンネル」にて放送された。
どちらも短縮版のみをハイヴィジョン化し、短縮版に存在しない部分はDVDマスターをアップコンバートして放送していた。
が、両者は同一では無いと思われ、「2014年放送版」は「2008年放送版」を元に色調整等の修正が行われた物の様で、厳密には「再放送」とは言えない。

両者の共通点としては、例えば、短縮版ハイヴィジョン映像を全てを使用した訳では無く、1カット内で版が切り替わる場合は、1カットそのままをDVDのアプコン映像で補っている。1カット内で映像が切り替わらない部分でもDVDアプコン映像を使用していたりで、極めてハイヴィジョン率の低いものとなっており、ちょっと残念な内容となっている。

とは言え、初のハイヴィジョン映像で観られた「キングコング対ゴジラ」・・・。当時の私だったら狂喜乱舞していたかも知れないが、この記事を書いている時点で、もう「4Kデジタルリマスター版」が存在する時代。2008年と言えば、まだまだ我が家はブラウン管テレビ・・・。ハイヴィジョンのデジタルテレビなんて、夢のまた夢の話だった頃の事だ。

うん、泣くしかないだろう・・・号泣。。
以下に、「2008年版&2014年版日本映画専門チャンネル」キングコング対ゴジラの、(おそらくは皆さん共通の)認識的な事や個人的に思った事等を記す。

1.HD版製作にあたり、主に2種類のマテリアルから構成された
2008年に「史上最強ハイビジョン ゴジラ完全放送」を企画した「日本映画専門チャンネル」は、本当に素晴らしいプロジェクトだったと思う。
また、2014年の放送に向けて再度の調整等の修正を行い、放送用マスターを制作されたスタッフの皆様の素晴らしい仕事には心から感嘆する。
多忙を極める過密スケジュールの中で綿密で精細さを求められる作業の連続の日々だった事を想像すると、本当に素晴らしい仕事だったのである。


2.これら2種類の「キングコング対ゴジラ」冒頭には、それぞれ、下記の文字が記されている

2008年放送版「キングコング対ゴジラ」
『これから放送いたします「キングコング対ゴジラ」はハイビジョン・マスターにてお送りしますが 一部、通常画質からのアップコンバート映像が含まれております あらかじめご了承ください』

2014年放送版「キングコング対ゴジラ」
『これから放送いたします「キングコング対ゴジラ」の映像の一部は、フィルム原版が現存しない為、現存する最も良好なDVDマスターのアップコンバート映像で補完しています。』



3.(両ヴァージョン共に)全ての「短縮版」はHD化されるも、全てのHDデータを使用するという選択はなされなかった
この「キンゴジ・HD化プロジェクト」に於いて、使用したマテリアルは、主に2種類と思われる。
[1] 「キンゴジ・短縮版」「キンゴジ・カットネガ」をハイヴィジョンテレシネしたもの。
[2] 2001年に発売されたDVDの元データをアップコンバートしたマテリアル。

まず、冒頭の「東宝創立30周年記念映画」の部分は2001年DVD化の際のDVDマスターを使用しているが、「東宝マーク」は新たにハイヴィジョンテレシネした物が使用された。
が、編集の際の不手際があった為か、「2008年版」ではHD化された「キンゴジ短縮版」の「東宝マーク」が使用されている(もちろん本来はこちらの方が「正しい『HD短縮版の東宝マーク』」である)。
また、「2014年放送版の東宝スコープマーク」が、果たしてどの作品からの流用だったのか等は不明。
2008年「史上最強ハイビジョン ゴジラ完全放送」の際の
「キンゴジ・東宝マーク」
2014年「総力特集ハイビジョン・リマスター完全放送」の際の
「キンゴジ・東宝マーク」


その後に続く映像でも、極力、1カット内で「DVDマスター」から「ハイヴィジョン映像」に切り替わる事のない様な工夫がなされた(画質が違い過ぎる為と思われる)。
本来なら短縮版HDソースからDVDマスターに切り替わるシーン
「聴取者は何を望んでいるか!これが宣伝の本義だ!テーマだ!
わ、分かっとんのかね!」
の様に途中で切り替わるシーンは、最初から編集済みのDVDマスターを使用。
「〜QTVでは『シーホーク号海底探検シリーズ』を企画しているという情報がある!
我がパシフィック製薬としては、TTV諸君の応援を得て〜」
のカットも、短縮版HD映像は使用せず、
編集済みのDVDマスターをそのまま使用。


その他、下記等の編集に於いては、多少、意味が読み取れなかったものがある。
「バーン!バッケラカーン!」「シオシオ」(と聴こえる部族語)
このシーンは「短縮版ハイヴィジョン」画質で収められているのだが、
この次に続くシーンはDVDマスターのアプコン映像が続く・・・、
「『アプコン明け』の短縮版ハイヴィジョン映像」は、
酋長がいきなりトランジスターラジオをプレゼントされるシーンだ。
「世界中の情勢が...直ぐちぇんぶ!ちぇんぶ分かる!」
などのシーンは、何故かDVDマスターが使用された。


したがって、「短縮版ロール1」の冒頭を飾る「ゴジラとコングの激闘シーン」は、「短縮版ロール1冒頭HDテレシネ映像」では無く、「DVDマスターのアプコンマスター」を使用している。
これは“再構築の作業”が大変だと思われ、致し方無い事かと思う。
いずれも「短縮版ロール1ハイヴィジョン映像」では無く、「DVDマスター」を使用。



4.サウンドトラック
本放送の際のサウンドトラックは「2トラックステレオ音声」を使用しているが、1991年のLD化以降、LRステレオミックスが新たに作られた事は無く、「1991年完全復刻LD」の際にミックスされた、現時点で唯一の2トラックステレオ音源が使用されている。




番外編
下記のURLに記されている動画を発見した

https://archive.org/details/KingKongVsGodzilla1962Sub

この動画は最近(2019年4月)筆者が偶然見つけた物で、英語の字幕が付いている事から、英語圏の国で動画のUPがなされたものと推察する。
観てみたところ、「2008年日本映画専門チャンネル・キングコング対ゴジラ」と全く同内容のハイヴィジョン版である。

この動画には英語の字幕が付いており、海外のファンの方が独自に付けたものだと思うのだが、誤訳もかなり有る様で、思わずクスっと笑ってしまう部分もある(笑)。
正:
「あ、すいません!散らかしちゃって...。
あら、お出掛けですか?」


英文訳:
「あ、すいません!散らかしちゃって...。
あら、『おひこしさん』ですか?」
正:
「いえ、里へ疎開しようと思いまして...」

英文訳:
「いえ、『佐藤そかいしょう』と申しまして...」

...。。「自己紹介」になってしまった...。。
やはり、“戦争で何処かへ疎開する”という事が無かった海外では、「疎開」という日本語の英訳単語が存在しないのだろう...。
他にも多胡部長の『つまらん!』という台詞が「済まない!(謝意)」と誤訳されている部分が有ったりして、
この様な誤訳な会話が散りばめられていると、可笑しくてずっと観ていられる。
私は英語が苦手なので、もっと面白い誤訳があるのかも知れない。よろしければ探されてみるのも一興かと思われる。
本ヴァージョン(2014年版)は、2020年1月5日、「映画専門チャンネル・ムービープラス」にて放送された。